西山 大介にしやま だいすけ

所属
西山治作商店 https://jisakuworks.com/
作品名
あとさき

このお話を頂いてから、商店街の若手の理事の方と対話する機会をいただきました。コロナによって、これまでの商売が壊滅的なダメージを受けたこと、商店街に活気がなくなっていたこと、人がバラバラになっていくような危機感を感じていること、なぜ芸術表現を商店街で行いたいのか。まだうまくまとまっていない抽象的な輪郭を持つ具体的な言葉から「道徳」と「経済」の調和を説いた渋沢栄一氏の書物「論語と算盤」を連想しました。ただ、今回表現したいのは文化芸術と消費経済の調和です。経済がダメージを負っているいま、文化芸術が「ケア」を担うのだと考えました。 バラバラの図柄の中には共通する円を描いています。それは窓かもしれませんし、厳しい社会の中で頑張る人かもしれません。進む方向によっては、輝く未来に近づいているように見えるかもしれませんし、人々が再度この商店街に集うような印象を受けるかもしれません。見る人によって印象は変わりますが、暗い気持ちが箔のさまざまな輝きによって明るく照らされ、癒されることを祈っています。 西山 大介

作品の制作意図(作家から)
作品の制作意図(作家から)
商店街から

緊急事態宣言の中、まちを歩いていて気づいたことがあります。「本物って美しい」です。人が少なくなったまちでは、刺激的な広告や装飾ではなく、自然の美しさに目が向きました。桜や紅葉はもちろん、道に咲く名前もわからない花、そこにある本物の美しさに目を奪われ、立ち止まっている自分がいました。これはコロナの時期だったから起きたことかもしれませんが、その体験が忘れられず、普段は大まかにしか見ていないけれど、よく見ると美しいものを探すようになりました。それを人の手で表現するとしたら何になるのか。自然にも勝るとも劣らない、普段は目が向かないけれど、強く心が惹かれる、人が生み出す本物の美しさ。 そして、見つけたのが引箔でした。京都を代表する伝統産業の西陣織。その中でも高級な帯に使われる引箔。しかし引箔は主役ではありません。着物の帯の図柄を構成する糸のひとつです。ただ、よく見ると、それ自体が光を反射しきらきらと光り、さまざまな色と質感があることに気づきます。普段は主役ではない箔を主役にした時に、あの時の感動を鑑賞者の方と共有できるのではないか。そんな気持ちから、ツテを辿って今回の引箔職人である作家さんにオファーしました。アーケードを見上げると、普段は名脇役の箔が今回は主役になっています。人が生み出した本物の美しさを楽しんでいただければ幸いです。 寺町京極商店街

なぜ第一弾がこの作品になったのか(商店街から)
なぜ第一弾がこの作品になったのか(商店街から)