あとさきの、さき

前回好評だった引箔職人 西山大介さんのアートボードを、もう一度見たいという声にお応えして再展示いたします。 日本の美意識に「寂び」という概念があります。ただ古いもの、というわけではなく、何か惹かれるものがある。ただ美しいというわけでなく、華やかさを無くし、寂しさや儚さも感じる。見る人によって評価を変えるが、この変化には琴線に触れるものが確かにある。作られた時には感じられなかった美しさのようなものが、時が経てば経つほど、唯一無二の存在になっていく。
まだ1年しか経過していませんが、この「寂び」を感じられるような変化がほんの少し見られます。
そんな小さな「寂び」の美も感じられ、美しさに深みが出た「あとさき」をお楽しみください。

中川直幸
寺町京極|商店街美術館プロジェクト コーディネーター、ことくらす合同会社 / まるごと美術館キュレーター
作家
西山 大介 にしやま だいすけ
所属
西山治作商店 https://jisakuworks.com/
作品名
あとさき

このお話を頂いてから、商店街の若手の理事の方と対話する機会をいただきました。コロナによって、これまでの商売が壊滅的なダメージを受けたこと、商店街に活気がなくなっていたこと、人がバラバラになっていくような危機感を感じていること、なぜ芸術表現を商店街で行いたいのか。まだうまくまとまっていない抽象的な輪郭を持つ具体的な言葉から「道徳」と「経済」の調和を説いた渋沢栄一氏の書物「論語と算盤」を連想しました。ただ、今回表現したいのは文化芸術と消費経済の調和です。経済がダメージを負っているいま、文化芸術が「ケア」を担うのだと考えました。 バラバラの図柄の中には共通する円を描いています。それは窓かもしれませんし、厳しい社会の中で頑張る人かもしれません。進む方向によっては、輝く未来に近づいているように見えるかもしれませんし、人々が再度この商店街に集うような印象を受けるかもしれません。見る人によって印象は変わりますが、暗い気持ちが箔のさまざまな輝きによって明るく照らされ、癒されることを祈っています。
(2022年12月)
西山 大介

作品の制作意図(作家から)
作品の制作意図(作家から)
商店街から

いつも寺町京極商店街にご来街いただき誠にありがとうございます。 「寺町京極|商店街美術館」プロジェクトのスタートから1年が経ちました。
たくさんの反響をいただき、寺町三条から四条へと引いた一本の線が方々へ広がっていくのを実感しています。
新しいものと昔ながらのもの、人と人との交わり、内側と外側、そして賛否。
混じり合っていたものをあらためてかき混ぜながら、寺町京極商店街がたくさんの出会いの場になって、一人でも多くの人のかけがえのない場所になるための活動を続けていきます。
2年目の「寺町京極|商店街美術館」プロジェクトをどうぞ引き続き見守ってください。
寺町京極商店街

なぜ第一弾がこの作品になったのか(商店街から)
なぜ第一弾がこの作品になったのか(商店街から)