若林 義輝わかばやし よしき

混沌をつくって、整える。
若林 義輝
若林 義輝

若林義輝の作品は、一見すると混沌としているような印象を受けるが、しばらく眺めていると、安定した世界を作り出していることに気づく。そこには彼がこだわる「三角」と「石」、そして「小学校時代の体験」が関係している。 彼にとって「三角」は安定の象徴だという。三角形自体が非常に安定したバランスを保つオブジェクトであり、それを使って作り出される作品は、どれだけレイアウトを崩すようなオブジェクトを配しても、間に三角を配置すると作品世界が安定してくるという。 彼の作品の多くに、目立つオブジェクトはあるが、それが作品の主役を担うというよりも、バランスを乱す因子として存在しているようにも見える。そしてバランスを乱すオブジェクトを囲むように三角形を埋めていくことで、混沌とした世界が整えられ、主役が薄れていき、キャンパスがひとつの作品として仕上がる。彼はこのバランスを保つために三角を描き込むプロセスを楽しんでいる。 これは、彼の幼少期の経験そのものをトレースするような行為かもしれない。彼は「よく暴れる」子どもだったという。感情の沸点が低いというよりも、感情の沸点がどこにあるのかわからない状態。これは彼が持つ障害に関わっている。彼の感情が爆発するたび、すぐに大人が駆けつけてきて事態を収拾しようとするのだが、その様子を冷静に観察していると楽しくなったという。秩序を乱すオブジェクトの周りに、安定をもたらす三角を描くプロセスはこの経験のメタファーにも感じられる。 また、彩度の高い色を好んで使っているが、作品全体としては、キラキラと光っているような印象を受ける。実際にグラデーションを使った作品は光る鉱石にも見えるのだけれど、これは彼の石に対する執着と関係している。彼の家には彼が拾ってきた石が沢山あるそうで、そのほとんどの石の中にキラキラと光る鉱物が含まれている。めずらしい鉱物もあるのだけれど、彼はその小さな輝きに魅せられており、その影響が作品からも感じられる。 混沌としながら安定を保ち、キラキラと輝く因子を描く彼の作品は、社会の中からヒーローが生まれるのを待つ、抽象化された日本の現代社会に見えなくもない。

経歴
受賞暦 2016年 「五色の炎と八つの世界」かんでんコラボ・アート 入選
2017年 「季節と心情の変化」ビックアイアートプロジェクト 入選
グループ展 2016年 福祉現場で生まれるアート展(大阪/大阪デザイン振興プラザ(ODP))
2017年 第6回アウトサイダーアート2017豊橋(愛知/豊橋市美術博物館)
東京だよ!「アトリエやっほぅ!!」(東京/J’GALLERY&CAFÉ)
2018年 旅するまなざし~みつめる世界(京都/きりん舎)
2019年 「呼吸するように生まれたものたちPART2」(山梨/山梨県立美術館)
個展 2018年 フシギモヨウ(京都/studio&gallery MATTua-LA)

作品ギャラリー

若林義輝 原画展示販売会
(終了)

日時:9月9日(土)、9月10日(日)12:00〜17:00

会場:WITH YOU
〒604-8045
京都市中京区寺町通錦小路上ル円福寺前町283 3階 サファイヤ

WITH YOU